ECサイトでは販売面だけではなく返品に対しても、顧客満足度という観点から、しっかりとした方針を持って対応することが必要です。アパレルやアクセサリーなどは返品出来ることが一つのサービスとなってきていますので、売上に響き特に重要です。今回の記事はECサイト返品の傾向や返品に上手く取り組んだ事例と返品サービスを代行してくれるサービスの紹介をしています。
「返品対応をどのような観点で作り込めばいいの?」
「返品対応についてECサイト業界の動きを知りたい」
「返品対応を低コストで行いたい」
などとお考えのECサイト担当者の方には必見です!
目次 1. 日本の返品率と米国の返品率 3-1. オールバーズ 3-2. ロコンド 3-3. Zappos 5-1. ReCustomer |
米国のECにおける返品率ですが、以下のようになっています。
アパレルの返品率が40%というのはかなり高い返品率です。
分野 |
特性 |
返品率 |
書籍、ビデオ |
購入前に商品を確認可能 |
2~3% |
アパレル、アクセサリー、靴、インテリア |
色や試着の善し悪しが購入に影響 |
25~40% |
アパレルのみ |
色やサイズが分からない |
40% |
2018年3月日本貿易振興機構(ジェトロ)ニューヨーク事務所
「米国における電子商取引市場調査」より
米国をはじめとした海外では、実店舗でもオンラインストアでもほぼ無条件かつ送料・手数料なしで返品させてくれるお店が殆どだそうで、これが返品率40%の結果につながっているのでしょう。
ネットショップ担当者フォーラム「返品サービスの拡充が競争優位性&顧客体験の向上につながるワケ。消費者意識から見えるビジネスチャンスとは」によると、米国において「2019年ホリデーシーズンの返品:2018年のシーズン比6%増」とあり、返品はますます増えることが予想されます。
日本国内での返品率ですが、JDAソフトウェア・ジャパンの「2017年 インターネットショッピングに関する消費者意識調査」で以下の調査結果を発表しています。
英国と日本との比較ですが、返品しない人が2017年では日本では80.6%に対して、英国では32%ということで2.5倍程度の開きがあります。おそらく、海外と比較すると日本での返品率は低いものと思われます。
ただし、国内でも「自宅で試着、気軽に返品」をうたうファッションアイテムのオンラインストア「LOCOND(ロコンド)」のように急成長しているショップがあるので、他社も追随することによって国内でも返品率が欧米並みに上昇する可能性が高いと思われます。
返品から連想される言葉として「クーリングオフ」という言葉があります。
「国民生活センター」のサイトに「クーリングオフ」についての説明があります。
”クーリング・オフは、いったん契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、契約を再考できるようにし、一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度です"
ただし、以下のような説明もあります。
「通信販売には、クーリング・オフ制度はありません」
「特約がない場合には、商品を受け取った日を含めて8日以内であれば返品することができますが、その場合、商品の返品費用は消費者が負担します」
クーリングオフは購入した商品やサービスに問題があるわけではないが、購入者が返品したいという場合に一定の期間内であれば無条件に返品を受け入れる制度です。つまり、オンラインストアでは特約で返品不可を明記すれば商品やサービスに問題がなければ購入者からの返品を拒否できます。
ただし、時代の流れはオンラインストアでもというかオンラインストアであるからこそ、返品を受け入れる流れになってきています。以下にその流れについてご説明していきます。
年々消費者による返品に対する考え方が変化してきています。
実際に、返品専門会社のリサーチによると以下のような記述があります。
"回答者の97%は、返品に関するサービスが充実している小売企業と今後も取引を継続する"と答え、55%は、柔軟な返品ポリシーを提供していない小売企業とは取引をしないと答えました"
※返品専門会社Optoro社の報告書「4 Retail Trends: The Link Between Returns And Customer Loyalty」
この調査結果は返品ポリシーが提供されていないオンラインストアは売上げ機会を失うことを意味しています。
国内でも同様な傾向にあるようです。ECのミカタ「EC物販では避けられない“返品”を、むしろチャンスに変える、画期的なサービス『リバリュー』」という記事の中で、
"しかし最近の傾向として、大手のEC事業者様などでは、どんな商品であれ、理由不問で返品を受け付けるようになってきています"とあるように売上増が期待できるため返品ポリシーがゆるやかなものになっているようです。
ECサイトでの購入では実際に試してみたり、手に取って見たりすることができないため、ユーザにとっては返品無しの購入はユーザ側にとって一方的なリスクといえます。
返品ポリシーをゆるめることはこのリスクを軽減することになりますので。売上が増えるということは論理的に筋が通っています。返品ポリシーをゆるめることは中小のECサイトにも普及することは間違いないでしょう。
アマゾンの返品ポリシーには以下の文言があります。
"服&ファッション小物、シューズ&バッグ、30万円(税込)未満の腕時計およびジュエリーは試着後の返品が可能です"
これは対象カテゴリーの商品がECサイトでは実際に試したり、手に取って見たりできないので、ユーザが『これじゃない』と思った時に返品できないと不満となり顧客満足度が落ちるために「試着後」の返品を許しているものと思われます。
アマゾンは一般に広く浸透しているECサイトですので、この返品ポリシーが業界のベースになっているものと思われます。
競合サイトが同様なケースで返品に応じない場合には『アマゾンでは返品に応じてくれた』という不満がユーザには生じますし、レビューで返品の姿勢についてネガティブに書かれてしまうと見込みユーザも買い控えする可能性が出てきます。
ゆるやかな返品ポリシーも顧客サービスの一つといえます。
また、返品手続きを簡単にすることはユーザに対して、負荷を減らすことになりリスクをさらに下げるものとなります。ユーザのリスクが低くなることによりリピーターになってくれたり、競合店ではなく自社のサイトを選んでくれやすくなります。
商品が返品された場合の作業は主に以下になります。
・お客様への謝罪と返送と返金方法の確認
・返送された商品の検品
・良品の場合は在庫に戻し、再販不可の場合は処分
・経理処理
明らかに商品を販売するよりも返品処理の方が工数はかかります。では、返品ポリシーを厳しくした方が良いのでしょうか?
厳しくすると、ゆるい返品ポリシーを持つ競合他社にユーザを奪われてしまいます。
一つの解が『ネット通販の最大の弱点は「返品」、解決策はあるのか』という記事に対して、ロコンド代表取締役の田中 裕輔氏が行ったNEWSPICSでのコメントの中に見ることが出来ます。
"ザッポスは返品率38%、時価総額1兆円のザランドは40%超えてるんですけどね。
ちなみに記事中にある返品が儲からない、は嘘です。返品率40%でもちゃんとやれば儲かります。"
返品を嫌がるのではなく、いかにロスを抑えて売上拡大につなげるかということに注力すべきだと示唆していると思います。
返品ポリシーを緩め成功している企業を紹介します。
Allbirds合同会社が運営しているシューズブランドです。返品ポリシーは、次のようにかなり緩いものとなっています。
「シューズは商品の出荷日より30日以内であれば、返品できます。シューズは屋外で履いたとしても、送料無料で返品可能です」(一部抜粋)企業価値は14億ドル(約1500億円)以上といわれていて、国内でも原宿に実店舗をオープンしていて売上はAllbirdsの中で世界一だそうです。
物流を担当しているパートナー企業との連携で返品交換や注文翌日の配送を実現しているようです。
株式会社ロコンドが運営している靴や衣料品のオンラインストア「LOCOND」です。
「自宅で試着、気軽に返品」をキャッチフレーズにしていて、返品条件として
・試着は土足で歩かないお部屋のみであること
・お届け時と同様の状態での返品であること
・直接肌に触れない状態でのご試着であること
・サイズ交換:商品発送から14日間
・返品:商品発送から21日間
とゆるい返品ポリシーになっています。返品ポリシーとなっていますが、むしろ顧客サービスの一つとして返品条件を提示しています。実際にロコンドの返品率は計測情報やレビュー充実化によって、以下のように改善されてきています。
ロコンド社「2021SS Partner’s Presentation (PPAP)」より
また、ローソンのスマリによって、「簡単に返品」できることにより、「試着できる」通販サイトとして訴求しています。
ロコンド社「2021SS Partner’s Presentation (PPAP)」より
Zapposはラスベガスに本社を置く靴を主体としたECサイトです。
1999年に創業し2008年に売上10億ドルを達成、2009年に約9億ドルでアマゾンに買収されてアマゾンの傘下になっています。返品ポリシーは次のようになっています。
・購入から365日以内であれば返品可能
・返品送料無料
・未着用でオリジナルのタグが付いていること(セキュリティタグが付いている場合はそれも含む)
・オリジナルのパッケージ有り
と、ゆるい返品ポリシーです。創業年度を考えると革新的な返品ポリシーであることがわかりますしアマゾンが買収するくらいに成功していたことが分かります。
上記の成功事例から分かるように返品を拒否するのではなく、購入者のニーズをキャッチし「返品を次の購買行動に繋げる」動きが大切になっていくというのがお分かりいただけたのではないでしょうか?
そこで、実際に返品におけるフローは現在どのように行われているのかを調査しました。
商品が返品された場合の具体的な作業は主に以下になります。
・お客様への謝罪/やりとり
・注文商品の確認
・返送と返金方法の確認
・返送された商品の検品
・良品の場合は在庫に戻し、再販不可の場合は処分
・経理処理
このように返品対応業務は、商品を販売するよりも手間がかかります。
さらに、購入者とのやりとりはメールで行い、返品商品はスプレッドシートやエクセルで管理されているのが現状です。ECサイト運営における物流やバックオフィスは自動化しているが、返品周りの業務に限ってはアナログな手法を使っている事業者が多いです。
小売事業者にとっては、返品作業に対し「返品対応業務をどう効率化してコストを削減するか?」が課題となります。以下では、このような課題を解決するサービスをご紹介いたします。
・注文キャンセルの自動化
・返品、交換の自動化
・購入者による商品の配送状況の確認
・購入者による住所の変更
RecustomerとはRecustomer株式会社が開発・運営している、返品・注文キャンセル・配送日確認などのCS業務をサポートする国内サービスです。注文後の顧客対応を一気通貫で自動化、及び、顧客体験向上による中期的な売上向上が可能です。主な機能は以下になります。
Recustomer returnは、返品(返金・交換)・注文キャンセルを自動化する機能です。
購入者はECサイトと連携した返品・キャンセルフォームより、注文番号などの必要情報を入力しアクセスした後
返品商品や返品理由などを選択するだけで簡単に返品リクエストを送ることができます。
EC事業者は、受け付けた返品リクエストを顧客情報・注文情報が紐づいた状態で管理することができ、ステータスを変更することで、購入者に次のアクションを依頼する自動メールが送信されます。
EC事業者が顧客と返品に関するコミュニケーションを取る必要がなく、業務効率を向上させることができます。
さらに、顧客の要望にシステムが自動で対応するため、人が対応する以上に返品スピードを向上させることが可能になり、顧客体験向上につながります。
Recustomer trackingとは、購入商品の追跡ページを作成し、購入商品の配送状況の確認・配送日時変更・住所変更などを購入者が自身で行うことができます。
それにより、配送に関するお問い合わせを削減することができます。
また、追跡ページにてECサイトや別商品のレコメンドをおこなうことで再購入につなげます。
会社名 |
Recustomer株式会社 |
本社所在地 |
東京都千代田区神田和泉町1-8-11 サン・センタービル5F |
電話番号 |
03-5829-8330 |
設立 |
2017年3月 |
サービスURL |
株式会社SynaBizが運営している「リバリュー」です。
・返品ポリシー作成支援
規約作成のノウハウに基づく支援
・返品受付、検品代行
返品された商品をそのままストックして1ヶ月ごとにリバリューへ送付するだけ
・返品の買取、キャッシュ化
商品の状態にかかわらず一定の料率で買取
リバリューは返品された商品や余剰在庫、滞留在庫を流通させるチャネルとして、自社で運営している会員制ECサイト「リバリューBtoBモール」、リサイクルチェーン、海外販路などを持っています。
会社名 |
株式会社 SynaBiz |
本社所在地 |
〒141-0021 東京都品川区上大崎2-13-30 oak meguro3階 |
電話番号 |
03-6416-0931 |
設立 |
2015年7月1日 |
URL |
販売業にとって返品は避けて通れない作業で、対応を間違えるとユーザを失ってしまいます。
従って、返品対応は後ろ向きの対応ではなく、顧客サービスの一つとして取り組むべき活動です。
今回、ご紹介した内容を参考に自社にとってどのような「返品サービス」を提供したら顧客満足度が高まり売上を上げることが出来るかを検討してみてください。